ご家族が亡くなり悲しみに浸る間もなく、残されたご遺族は様々な相続手続を行わなければなりません。

 しかしながら、相続というものは一生のうちに何度も経験することではないため、一体何から手をつけてよいのかわからない人も多いはずです。また、相続手続がすべて完了するまでかなりの時間と労力を要するため、慣れない人にとっては大きな負担となります。 

 そんな場合に専門家である司法書士にお任せいただければ、スムーズに手続が完了し、ご遺族の皆さまが一日も早く日常生活を取り戻すことにお役に立つことができます。

相続手続を放置した場合の問題点

1 年月が経つにつれ、関係者が増え、事情が複雑化し、その分だけ相続の手続は難しくなる。

2 不動産の売却や担保の設定等の処分が困難になる。

3 相続税の無申告加算税や登記懈怠による過料の制裁を受ける。
 
 ※令和6年4月1日より相続登記の義務化が始まりますが、これにより被相続人の死亡を知った日から3年以内に登記をしない場合、相続人には100万円以下の過料の制裁が課されることとなりました。

 以上のような点を考えた場合、面倒であっても、速やかに相続手続を行う方が賢明と言えるのではないでしょうか。



専門家選び

 ネット上で検索をかけると、相続手続を行う様々な業者や専門家がヒットするかと思います。そのような中で、どのような業者・専門家を選べばよいか、悩まれる人も多いのではないのでしょうか。

 最近、銀行や葬儀会社等の業者が、相続手続の代行を唄っているところもありますが、このような場合、業者自身が手続を行うのではなく、実は、提携士業事務所に丸投げしているのが通例です。業者はこのような士業事務所からキックバックを貰って利ザヤを得る一方、士業事務所はこの負担を客に転嫁させるため、かえって直接に士業事務所に依頼するより割高になることが多いと思われます。したがって、できるだけ費用を節約したいのであれば、このような業者に対して依頼するのは避けた方がよいでしょう。

 それでは、具体的にどのような専門士業に相続手続を依頼すべきでしょうか。

 相続手続を行うために必要な資格というものは、実は存在しておりません。ただ、相続手続に付随して行われる手続によっては、特定の士業の独占業務とされているため、その士業事務所に頼んだ方が面倒がなくてよいというわけです。

 次に、各専門士業を選ぶポイントを見てみましょう。

1 司法書士
  相続財産中に不動産が含まれ、登記について名義変更が必要な場合です。
  税理士や弁護士に比して、一般に費用は安価に済むと言われています。

2 税理士
  相続財産の評価額が高額なため相続税の確定申告が必要な場合です。
  費用は中程度、司法書士に比べるとやや高額となるかもしれません。

3 弁護士
  相続人間において対立が生じており、遺産分割協議がまとまらない場合です。
  家事に関する紛争の代理は弁護士のみの専権業務となっているのが、その理由です。
  一般的に費用が高額になる傾向があるのが問題でしょうか。

 ただし、相続の事案が複雑な場合は、上記いずれかの専門士業事務所に手続を依頼したとしても、その士業事務所は提携士業事務所と共同して手続を進めるのが通例となっています。したがって、このような場合は、基本的に相続手続を専門に行っている士業のいずれを選んだとしても、特に大きな差はないかと思われます。

必要な相続手続

1 相続税の確定申告、被相続人の所得税等に係る準確定申告

 相続財産の評価額が基礎控除額を超過するほど高額であったり、小規模宅地の特例等の税の軽減措置の適用を希望する場合は、被相続人の住所地を管轄する税務署長に対して相続税の確定申告を行うことが必要とされています。申告期限は、被相続人の死亡を知った日から10か月以内となっています。

 また、被相続人が自身の所得税の確定申告を行わないまま死亡した場合、相続人は、被相続人に代わって、準確定申告という手続を行う必要があります。こちらの申告期限は、被相続人の死亡を知った日から4か月以内となっています。


2 不動産その他相続財産の名義書換え

 不動産、自動車等車両、銀行預金等の財産については、登記・登録・口座名義等が被相続人名義となっているため、特定の相続人が相続によりこれらの財産を取得した場合、名義変更の手続することが必要となってきます。

 手続先            期限
不動産法務局(令和6年4月1日より)相続開始を知った時より3年以内
自動車
(軽自動車除く)
運輸局所有者の変更(相続開始)のあった日から15日以内
銀行預金各金融機関なし。ただし、消滅時効に注意


3 社会保険の手続

(1) 年金受給者の死亡の届出

 まず年金受給者であるご遺族が亡くなった場合、年金の支給を停止するため、年金事務所等にご遺族が死亡した旨の届出を行うことが必要となります。これをせずに亡くなったご遺族の銀行口座に年金が振り込まれてしまった場合、後日、この年金を返還する必要が出てきますので注意が必要です。なお、戸籍法上の死亡届を死亡した日から1週間以内に市区町村に対して行っている場合は、年金事務所への届出は省略することができます。 
 

(2) 遺族年金

 年金各法の「遺族」として、遺族年金の受給要件に該当する場合は、裁定請求を行うことにより遺族年金等の年金を受給することができます。

(3) 未支給年金等 

 年金受領者の未支給年金がある場合、医療保険の高額療養費等で未支給金がある場合においては、所定の手続を行うことにより、ご遺族がこれを受領することができます。
 ただし、未支給年金については、相続財産とされておらず、一定の親族のうち生計同一関係にあったもののみが受給できるとされている点は注意が必要でしょう。